泡消火設備に使われてきたPFAS(パーフルオロアルキル化合物)は、環境や健康への影響から世界的に規制が強まっています。既存の泡消火剤にPFOS・PFOAなどが含まれている場合、今後は薬剤の入替や設備の更新が必要になる可能性があります。ここでは、PFASの概要、泡消火設備との関係、そして今後の対応ポイントを分かりやすく解説します。
PFASは、フッ素と炭素の強い結合をもつ化学物質の総称です。耐熱性・撥水性・耐油性に優れ、撥水スプレーやコーティング材、食品包装などに広く使われてきました。泡消火剤にもこの特性が活かされ、油火災対応などに利用されてきました。
PFASは自然界で分解されにくく、水や土壌、生物体内に長期間残留します。そのため「永遠の化学物質」と呼ばれることもあります。人体に蓄積すると免疫・ホルモン・発達などに影響を及ぼす可能性があり、世界各国で使用削減が求められています。
PFASの中でもPFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)とPFOA(ペルフルオロオクタン酸)は、消火剤や防汚剤などで多く使用されてきました。特に泡消火設備の薬剤成分として油火災対策に用いられてきましたが、現在では製造・輸入が原則禁止されています。
泡消火設備は、可燃性液体や油火災に迅速に対応できる仕組みです。その性能の鍵となるのが「泡消火剤」です。従来はPFASを含む薬剤(AFFF:Aqueous Film Forming Foam)が主流でしたが、PFAS規制によって使用継続が難しくなっています。
PFASを含む泡消火剤を使用すると、放水時に泡が排水路や地中へ流れ込み、水質・土壌汚染を引き起こすおそれがあります。特に訓練や試験で使用された薬剤が回収されず、環境中に拡散するケースが問題視されています。
国際的にはストックホルム条約によりPFOS・PFOAが規制対象に指定され、アメリカやEUでは段階的な使用禁止が進行しています。日本でも2024年以降、PFASを含む泡消火剤の使用制限が厳格化され、補充薬剤の流通も縮小しています。
泡消火設備は人命・資産を守る重要装置です。性能を満たしながらPFASフリー化を進めることで、環境負荷を抑えつつ、継続的な防災体制を維持できます。検討段階から専門業者と連携し、薬剤選定・洗浄・試験・記録までしっかり管理しましょう。
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規制が強化されることで、PFASを含む泡消火設備は次のような影響を受けます。
PFOS・PFOA含有の泡消火剤は既に生産終了が進んでおり、補充・保守が難しくなっています。薬剤を補充できない設備は、早期にノンフッ素系泡剤へ更新する必要があります。
放水時の泡流出による汚染を防ぐため、訓練や試験時の排水回収・廃液処理が求められています。排出管理を怠ると、自治体や所轄消防による是正指導や罰則の対象になる場合もあります。
PFAS問題は、環境配慮・サステナビリティの観点からも注目されています。環境負荷低減への対応が遅れると、企業の社会的信用や評価に影響するリスクがあります。
近年はPFASを含まないノンフッ素系泡消火剤(Fluorine-Free Foam:F3)の採用が広がっています。性能改良が進み、既存設備でも適合しやすい製品が増えています。
・炭化水素系泡剤:発泡力と油面被覆性に優れ、環境への影響が小さいタイプです。
・たん白系泡剤:動植物由来の成分を使用し、生分解性が高く、環境にやさしいのが特徴です。
・シリコーン改良系泡剤:耐熱性と泡の持続性を両立させた新世代泡剤で、PFASを一切使用していません。
代替泡剤を選ぶ際は、既設のノズルやミキサーとの適合性、発泡倍率・粘度・濃度などの仕様を確認することが重要です。また、放射量や流量制御のバランスを取ることで、従来の性能を維持できます。
PFAS規制の強化を受け、近年はPFASを含まない泡消火薬剤の採用が広がっています。中でも、可燃性液体火災や流出油火災などに対応でき、既存設備の更新検討もしやすいのが、炭化水素系の泡消火薬剤です。
プロフォーム310は、炭化水素系界面活性剤を主成分とする合成界面活性剤泡消火薬剤です。低・中・高発泡性に優れており、初期消火や流出油火災に対して、火災油面を素早く流動・展開して速やかな消火につなげます。さらに、木材などの固体可燃物に対しても付着性・湿潤性が高く、対象火災の幅を広げたい現場でも選定候補にしやすい薬剤です。
使用濃度は3%で、型式番号は泡第51~24号。使用温度範囲は-10℃~+30℃とされており、季節環境を踏まえた運用計画が立てやすい点も特徴です。
| 企業名 | ヤマトプロテック株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都港区白金台5-17-2 |
| 公式HP URL | https://www.yamatoprotec.co.jp/ |
セーフミストは、フッ素化合物を一切含まない消火器として開発された製品です。2008年の発売以来、人体や環境への影響に配慮した薬剤設計が特徴で、PFAS規制の流れの中でも「人と環境にやさしい消火」を重視<したい現場で選定しやすいタイプといえます。
薬剤には、食品材料から作られた中性薬剤を採用しており、薬剤飛散による二次的な被害を抑えやすく、使用後の復旧が比較的容易です。厨房など日常的に人が出入りする場所や、復旧スピードが求められる施設にもなじみやすい設計になっています。
また、容器仕様にも工夫があり、VS3Aではキズや破損に強いステンレス容器を採用し、デザイン性が求められる空間にも配慮しています。VF3Aではキズやサビを防ぐ超硬質塗装と底部樹脂加工により、湿気を逃がして劣化リスクを抑える構造です。対応火災はABC火災に加え、厨房で発生しやすい天ぷら油火災にも効果を発揮します。さらに、フラットゲージにより、上部の状態確認がしやすい点も運用面でのメリットです。
| 企業名 | モリタ宮田工業株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都江東区有明3丁目5番7号 TOC有明ウエストタワー19階 |
| 公式HP URL | https://www.moritamiyata.com/ |
ECOSS-FOAMは、初田製作所が展開するECOSSシリーズの泡タイプ消火器で、水成膜泡消火薬剤を使用した機械泡消火器です。PFOSを含まない薬剤を採用し、PRTR法にも非該当とされているため、PFAS規制や環境配慮が求められる施設でも導入しやすい仕様となっています。
油火災に対しては、可燃物表面に水成膜を形成することで速やかな消火と再着火防止効果を発揮します。ARMFEシリーズでは、普通火災(A)・油火災(B)に加え、アルコール類などの水溶性可燃性液体火災にも対応でき、ガソリンスタンドや化学工場、製造現場など火災リスクの高い場所に適しています。
また、窒素ガスによる蓄圧式(バーストレス™)構造を採用し、破裂事故のリスクを低減。SUS本体による高い耐久性と、日常点検がゲージ確認のみで済む点も、維持管理面でのメリットです。
| 企業名 | 株式会社初田製作所 |
|---|---|
| 所在地 | 大阪府枚方市招提田近3-5 |
| 公式HP URL | https://hatsuta.co.jp |
スパークルフォーム EF(耐寒型)は、炭化水素系界面活性剤を主成分とした合成界面活性剤泡消火薬剤です。固体可燃物火災および石油類火災を対象とし、国家検定規格「泡消火薬剤の技術上の規格を定める省令(自治省令第26号)」に適合した型式承認品として、設備用途でも安心して採用できます。
低発泡から高発泡まで幅広い発泡倍率に対応し、泡の流動・展開が速いため、流出油火災などの初期消火に優れた効果を発揮します。また、高い湿潤性を持ち、木材火災やタイヤ火災など固体可燃物への適用範囲が広い点も特徴です。淡水・海水・硬水を問わず使用でき、経年変化や金属腐食が少ないことから、長期運用を前提とした設備にも適しています。
| 企業名 | 第一化成産業株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区神田神保町3丁目7番1号 |
| 公式HP URL | https://www.d-kasei.co.jp/index.html |
エアフォーム310は、天然由来のたん白質を主成分としたたん白泡消火薬剤です。環境への配慮を重視した薬剤設計が特徴で、石油類などの油火災を対象とした泡消火設備に用いられています。
泡安定性と耐熱性に優れた微細な泡を形成し、油面上を流動・展開することで速やかな消火効果を発揮します。また、固体表面への付着性が高く、壁面などの垂直面にも泡が留まりやすいため、延焼防止を目的とした用途にも適しています。シリーズとしてエアフォーム310・320・610が展開されており、設備条件に応じた選定が可能です。
| 企業名 | ヤマトプロテック株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都港区白金台5-17-2 |
| 公式HP URL | https://www.yamatoprotec.co.jp/ |
DKエアーフォーム HK3は、加水分解たん白質を主成分とし、安定剤として鉄塩などを配合したたん白泡消火薬剤です。船舶用として国土交通省(旧運輸省)規格に適合し、(一社)日本舶用品検定協会の試験規格を含む基準に合格しており、高い信頼性が求められる用途で採用されています。
油表面と空気との接触を遮断する強靭な泡膜を形成し、優れた流動性と付着性によって確実な消火効果を発揮します。耐油性・耐火性に優れているため、燃料油を扱う船舶設備や危険物を取り扱う現場にも適しています。また、経年変化が少なく、鋼・黄銅・アルミニウムに対する著しい腐食性がない点も、長期運用を前提とした設備で評価されるポイントです。
| 企業名 | 第一化成産業株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区神田神保町3丁目7番1号 |
| 公式HP URL | https://www.d-kasei.co.jp/index.html |
OF1(ゼロフッソワン)は、フッ素化合物を一切含まない消火薬剤シリーズです。なかでも「OF1 フォーム310」は、ノンフッ素(F3)泡消火薬剤として総務大臣による型式承認を取得しており、PFAS規制への対応と高度な消火性能を両立させた次世代のスタンダードといえる製品です。
従来のフッ素系薬剤は、油火災に対する優れた消火能力を持つ反面、自然界で分解されにくいPFASを含んでいることが課題でした。OF1シリーズは、環境や生体への影響を最小限に抑えた成分構成となっており、SDGsの観点からも企業の社会的責任(CSR)を果たす選択肢となります。
導入のメリットは環境面だけではありません。今後厳格化されるPFAS規制の影響を受けないため、将来にわたって安定した補充・運用が可能です。さらに、廃棄時の処理コストも、規制対象薬剤のような特殊な焼却処理を必要としないため、LCC(ライフサイクルコスト)の低減にも大きく寄与します。
| 企業名 | ヤマトプロテック株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都港区白金台5-17-2 |
| 公式HP URL | https://www.yamatoprotec.co.jp/ |
アルファフォーム310Xは、フッ素系界面活性剤を主成分とする水成膜泡消火薬剤です。生成された泡が燃焼している液面上を速やかに流動・展開し、油火災を効率よく抑制できる点が特長です。液面を覆う水成膜によって再着火を防ぎやすく、安定した消火性能が求められる設備で使用されてきました。
また、液面下から泡を注入するSSI方式にも対応しており、大容量タンクや危険物施設など、設備条件に応じた消火方式を選択できます。シリーズとしてアルファフォーム310Rも展開されており、用途や設計条件に応じた使い分けが可能です。使用濃度は3%、型式番号は泡第30~2号で、使用温度範囲は-10℃~+30℃とされています。
なお、PFASを含む泡消火薬剤を現在も取り扱っているのはヤマトプロテックのみとされており、販売は2026年12月までとされています。
| 企業名 | ヤマトプロテック株式会社 |
|---|---|
| 所在地 | 東京都港区白金台5-17-2 |
| 公式HP URL | https://www.yamatoprotec.co.jp/ |
泡消火設備のPFAS対応は、以下の流れで進めるのが一般的です。
既存の泡消火設備に使用されている薬剤を確認します。薬剤の銘柄・濃度・保管年数を把握し、必要に応じて成分分析を行いましょう。
PFASを含む薬剤は抜き取り後、貯蔵タンク・配管を洗浄し、残留成分を除去します。その後、PFASフリー泡剤を新たに充填します。ノズルやパッキン材なども交換が必要になる場合があります。
抜き取った泡剤や洗浄液は産業廃棄物として適切に処理します。排水路に流さず、回収・一時保管して外部処理することが求められます。
薬剤の変更や設備改修を行う場合は、所轄消防へ変更届を提出し、試験記録や成分証明書を添付します。これにより、法令遵守と安全性の両立が図れます。
近年のノンフッ素系泡剤は性能が大きく向上しており、適切な濃度と流量設計を行えば従来薬剤と同等の消火力を発揮します。
薬剤単価や洗浄費用は増える傾向にありますが、補充困難・法規制リスク・汚染対応コストを避けられる点で長期的には合理的です。
PFASを含まない薬剤を使用した試験のほか、薬剤を用いないドライ訓練も有効です。実施時は回収設備や閉回路システムを利用し、環境への排出を最小限に抑えましょう。
PFAS(PFOS・PFOA)の規制強化により、既存の泡消火設備は更新・改修が必要になるケースが増えています。今後はPFASフリー泡剤の採用が標準化され、環境と安全を両立した防災設計が求められます。
現状把握・薬剤の適合確認・洗浄と廃液処理・所轄手続きを順序立てて行い、早期にPFAS対応を完了させることで、将来的なリスクを大きく減らせます。
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